歯周病の進行を食い止める!外科治療のメリット・デメリット
2025年04月12日(土)
こんにちは。東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」です。

歯周病は多くの方が患う生活習慣病のひとつですが、放置していると歯を失うかもしれません。特に、歯周病が進行している場合には、基本的な歯周病治療だけでなく、麻酔や歯茎の切開を伴う治療が必要になることがあります。
しかし、炎症を改善することで、歯周病を食い止められるのが歯周外科治療の最大のメリットです。外科治療と聞くとネガティブなイメージがあるかもしれませんが、治療を受けるメリットについて知っておくとよいでしょう。
この記事では、歯周病の外科治療で行うことやメリット・デメリットについて詳しく解説します。
歯周病の外科治療が必要になるケース

歯周病と診断された場合、まずは歯石を除去するスケーリングやルートプレーニングという処置を行います。
しかし、基本的な歯周病治療を行っても症状が改善しない場合、次のステップとして歯周外科治療が提案されます。歯周病の外科治療が必要になるケースは、以下のとおりです。
歯周病が進行しているケース
健康な歯茎の場合、歯と歯茎の隙間はわずか1~3mm程度です。
しかし、歯周病を発症すると歯周ポケットの深さは4~5mmになり、重症化すると7mm以上になることがあります。
これを放置すると、歯周病が悪化して歯が不安定になり、最終的には歯を失うことにつながります。そのため、歯周病が重症化している方や基本的な歯周病治療で症状が改善しない方には、歯周外科治療が推奨されます。
骨吸収が進んでいるケース
中等度以上に歯周病が進行すると、顎の骨にまで炎症が広がります。ここまで炎症がすすむと、基本的な歯周病治療では改善しないことが多いです。そのため、歯周外科治療を行い、歯周ポケットの深くにある汚れを除去したり、骨の再生を促したりします。
歯根が露出しているケース
中等度以上の歯周病になると、顎の骨が吸収され始め、歯茎が下がることがあります。歯の根面が露出すると、冷たいものや熱いものがしみたり、歯ブラシが当たる刺激で痛みを感じたりすることがあります。
また、歯茎が下がると歯が長く見えるため、見た目もよくありません。そのため、歯周病により根面が露出している場合には、歯周組織を回復させるために外科治療を行う場合があります。
歯周病の外科治療で行うこと

主な歯周病の外科治療の内容は、以下の通りです。
フラップ手術
歯周ポケットが深くなった中等度以上の歯周病の場合には、フラップ手術を行います。フラップ手術とは、歯茎を切開して歯根を露出させ、歯周ポケットの奥深くに付着した歯垢・歯石を除去する手術のことです。
ふだんの歯磨きや歯周基本治療では取れない汚れを除去できるため、歯周病の炎症の改善が見込めます。また、歯石を取り除いたあとに歯の根の表面をなめらかに仕上げることで、歯周ポケットの改善を促せるのもメリットです。
歯周組織再生療法
失った歯茎や顎の骨などを再生する外科治療を、歯周組織再生療法といいます。歯周組織を再生するための薬剤を患部に塗布して、失われた歯周組織の再生を促します。歯周組織再生療法には主に以下の3つがあります。
GTR法
GTR法とは、メンブレンという人工の膜で患部を覆って歯周組織の再生を促す治療法です。骨が再生する時間よりも粘膜の再生にかかる時間のほうが短いです。粘膜が先に再生されると、スペースが足りず、骨が十分に再生されません。
そのため、メンブレンで破壊された部分を覆って骨が再生するスペースを確保します。これにより、患部に歯肉が入り込むのを防ぐことができ、骨の再生を促せるのが特徴です。
リグロス法
リグロスとは、日本で開発された歯周組織を再生させるための薬剤で、保険が適用されます。ヒト由来の成長因子の作用により、歯周組織の細胞を増やし、吸収された骨や歯茎の再生を促す効果があります。
麻酔をして歯茎を切開し、歯根に付着した汚れや歯石を除去したあとに薬剤を塗布します。その後、歯茎を縫合して患部の治りを待ちます。
エムドゲイン法
エムドゲインとは、ブタの歯胚組織から作られたタンパク質の一種です。これを塗布することで、歯が生えるときと同じ環境を作りだします。歯肉の再生はもちろん、骨の再生も促せるのが特徴です。手術の方法はリグロスと同じですが、エムドゲインは保険が適用されません。
歯周形成手術
健康な歯茎を上顎やほかの部位から採取し、局所的に下がった歯茎の部分に移植する治療を歯周形成手術といいます。下がった歯茎が改善されることで見た目を整え、併せて知覚過敏も改善できるのがメリットです。
歯周病の外科治療を受けるメリット

外科治療と聞くと、怖いなどのネガティブなイメージがあるかもしれません。
しかし、歯周病が進行している場合には非常に有効な治療です。ここでは、歯周病の外科治療を受けるメリットについて解説します。
歯周ポケットの深くに付着した歯石を除去できる
歯周病が重症化すると、歯周ポケットが深くなり、歯の根面にも歯垢・歯石が付着します。歯周外科治療により、歯周ポケットの深くに付着した汚れを除去することで、炎症を軽減できるのがメリットです。また、口臭の改善も見込めるでしょう。
歯周病の進行を食い止められる
歯周病菌は酸素を嫌うため、特に歯周ポケット内で繁殖しやすいといわれています。そのため、歯周ポケット内の歯垢・歯石を放置していると、歯周病が進行して、最終的には歯を失うこともあるのです。
フラップ手術で奥深くに潜んだ汚れを除去することで、炎症を改善し、歯周病の進行を食い止めることができるでしょう。
歯の寿命を延ばせる
歯周外科治療により歯周病の症状を改善できれば、抜歯を回避できます。ご自身の歯を残せる点は大きなメリットといえるでしょう。歯周病による歯茎や顎の骨の炎症が治まれば、歯のグラつきの改善にもつながります。
セルフケアがしやすくなる
歯石の表面はザラザラとしているため、放置すると歯周病の原因となる歯垢が付着して口内環境が悪化します。歯周外科治療により徹底的に歯石を除去し、歯周ポケットを浅くすることでセルフケアがしやすくなります。
これにより、毎日のセルフケアがしっかりできるようになれば、歯周病の悪化を防ぐことができるでしょう。
見た目を改善できる
歯周病の外科治療によって、下がった歯茎や骨が改善されれば、審美的な回復が見込めます。口元の見た目を改善できれば、自信を持つことにもつながるでしょう。
歯周病の外科治療を受けるデメリット

歯周病の外科治療にはさまざまなメリットがありますが、デメリットも存在します。ここでは、歯周病の外科治療を受けるデメリットについて解説します。
歯茎が下がることがある
歯周病は、歯茎に炎症が起こっていて腫れ上がっている状態です。そのため、外科治療により歯茎の腫れが治まると、歯茎が下がることがあります。また、歯の根面が露出すると、知覚過敏の症状が現れることもあるでしょう。
術後に腫れ・痛みが生じることがある
歯周外科治療は、基本的に入院は必要ありません。虫歯治療と同じく、局所麻酔で対応でき、治療時間も1時間程度です。
治療中は麻酔をするため痛みはないものの、歯茎を切開するため、術後に歯茎が腫れることがあります。また、歯周ポケットの深くに付着した歯石を取った刺激で痛みが生じる可能性もあります。
しかし、これは一時的な症状で、1週間もすれば腫れや痛みが改善するケースがほとんどです。また、痛みを感じても、痛み止めを服用することで一時的に和らげることができるでしょう。
治療法によっては保険が適用されない
治療法によっては保険適用外となり、費用が高額になる場合があります。例えば、歯周組織再生療法の場合、リグロス法には保険が適用されますが、GTR法やエムドゲイン法は自費診療です。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、歯科医師に相談のうえ、ご自身に合った治療法を選択しましょう。
歯周病の外科治療を受けられない人

健康状態やお口の状態などによっては、歯周病の外科治療が受けられないことがあります。ここでは、歯周病の外科治療を受けられない人について解説します。
持病のある方
持病のある方の場合、歯周病の外科治療が受けられないことがあります。例えば、糖尿病や心疾患を患っている方が外科治療を受けると、体調が悪くなる可能性があるのです。免疫力の低下によって傷の治りが遅くなったり、合併症を引き起こしたりするリスクもあります。
また、骨粗しょう症を患っている方が外科治療を受ける場合、薬の影響で骨が壊死するリスクもあります。そのため、歯周外科治療は受けられません。
妊娠中の方
妊娠中でも一般的な歯科治療は受けられますが、外科治療は避けたほうがよいとされています。治療によって身体に負荷がかかるためです。安定期に入れば治療を受けられる場合もありますが、歯科医師と相談のうえ、治療方針を決定するのがよいでしょう。
喫煙習慣のある方
喫煙習慣のある方は、喫煙習慣がない方に比べて歯周病の発症・悪化のリスクが高いといわれています。そのため、せっかく歯周外科治療を受けても、喫煙習慣があると治療の効果を得られない可能性があるのです。
喫煙すると血流が悪くなるため傷の治りが阻害されます。合併症を引き起こすリスクもあるため、禁煙することが推奨されます。
セルフケアができない方
セルフケアができない方も外科治療が受けられないことがあります。なぜなら、歯周外科治療を受けて炎症が改善したとしても、しっかりとセルフケアができなければ、術後に炎症が再発する可能性が高いからです。
歯周病の進行を抑えるためには、歯科医院で治療を受けるだけでなく、しっかりとセルフケアを行うことも欠かせません。
まとめ

歯周病の外科治療により、除去が難しい歯周ポケットの深くに付着した汚れを徹底的に除去できます。これにより、歯周病の進行を食い止め、歯の寿命を延ばせるのがメリットです。
ただし、健康状態や口内環境などによっては治療を受けられない場合もあります。歯周病を改善するためには、しっかりとセルフケアを行うことも大切です。
歯周病にお悩みの方は、東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」にお気軽にご相談ください。
当院では、小児歯科を中心に成人の一般歯科や矯正治療なども行っています。診療案内はこちら、ご予約も受け付けております。