こどもの口呼吸の原因と体・歯並びに与える影響とは?改善方法も解説

2023年08月21日(月)

小児歯科

こんにちは。東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」です。

歯を治療中の女の子

こどもの口呼吸は、鼻炎などにより鼻呼吸が困難である場合や、歯並びや顎の形により唇を完全に閉じることができないなどの原因が考えられます。口呼吸を放置していると口腔内だけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため早めに改善することが大切です。

 

今回は、こどもの口呼吸の原因と体・歯並びに与える影響、改善方法について解説します。

口呼吸が体や歯並びに与える影響とは?

歯科医院で不安そうな女の子

口呼吸を続けていると、歯並びなどの口腔の問題だけでなく、全身の健康にも影響を与えます。ここでは、口呼吸が体や歯並びに与える影響についてご紹介します。

歯並びが悪くなる

通常、舌は上顎全体にあたっていますが、口呼吸をするこどもの場合、舌が下顎のほうに位置することが多くなります。

舌の位置の変化は、顎の成長にも影響を与えます。舌が下顎に力を加え続けることで、下顎の成長が促進され、結果として上顎と下顎の位置関係が逆転し「受け口」という状態になることがあるのです。

さらに、口呼吸を続けることで、唇の筋肉の力が弱くなることも知られています。これにより、前歯を正常な位置に保つ力が低下し、前歯が前に突き出す「出っ歯」にもなりやすいです。

虫歯や歯周病を発症しやすくなる

私たちの体には、口内を清潔に保つ重要な機能が備わっています。それが「唾液」です。

唾液には、口内の細菌や食べかすを洗い流す「自浄作用」と、虫歯や歯周病を引き起こす菌の増殖を防ぐ「抗菌作用」が備わっています。

 

しかし、口を開けたままの口呼吸をしていると、空気が直接口内に入ることで口が乾燥しやすくなり、乾燥状態が続くと唾液の分泌が減少します。唾液の分泌が不足すると、その自浄作用や抗菌作用が低下し、結果として口内に菌が増殖しやすくなるのです。これが、虫歯や歯周病のリスクを高める原因となります。

口臭が強くなる

口呼吸により口内が乾燥すると、細菌が増殖しやすくなります。これらの細菌は、口内の食べかすを分解することで、悪臭の原因となるガスを放出します。これが口臭の主な原因となるのです。

風邪を引きやすくなる

人間の鼻は特別な機能をもっており、空気を吸い込む際のフィルターとしての役割を果たしています。具体的には、鼻毛や鼻の粘膜が外から吸い込む空気中のウイルスや病原菌、さらにアレルギーを引き起こす可能性のある物質をキャッチし、それらが体内へ侵入するのを防ぐ働きをしています。

 

しかし、口を通じて直接空気を吸い込む口呼吸の場合、鼻のフィルター機能が働きません。その結果、ウイルスや細菌が直接気管を通って体内に入り込むリスクが高まり、風邪やインフルエンザをはじめとする感染症にかかりやすくなってしまうのです。

口呼吸をしているこどもの特徴とは?

口をポカンとあけた男の子

口呼吸をしているこどもには、いくつかの特徴があります。当てはまる場合は、口呼吸をしていないか注意深く観察してください。

唇を舐める

口呼吸のこどもは、呼吸を口で行うことから、唇が乾燥しやすくなります。そのため、常に乾燥感があることが多いです。乾燥による不快感を和らげようとして、こどもたちは唇を舐める動作を繰り返すことがあります。

 

特に、外出時の風や冷暖房の効いた部屋など、乾燥しやすい環境では、唇を舐める行動が目立つことがあります。日常生活で唇を舐める動作を繰り返すこどもを見かけた場合、口呼吸の可能性が高いと考えられるため、注意深く観察することが大切です。

唇が白くなりやすい

こどもが口呼吸をしているかどうかを判断する際の手がかりとして、唇の色や状態に注目しましょう。

一般的に、健康なこどもの場合、上唇と下唇の色はほぼ同じであり、均一な色合いをしています。

 

しかし、長時間にわたって口を開けて呼吸をしているこどもは、特に上唇が乾燥しやすくなります。上唇が白くなったり、乾燥の影響で唇が厚くなったりすることがあるでしょう。また、厚くなった唇は肌との境目が不鮮明となり、その違いが一目で分かる場合もあります。

滑舌が悪い

口呼吸のこどもには、舌が前に出ているケースがあります。

舌が正常な位置よりも前に出ていると、発音の際の舌の動きを妨げ、正確な発音が難しくなります。特に、舌の先端を上唇や上歯茎につける発音、「た」「な」「さ」といった音が不明瞭になりやすいのです。

 

舌の位置が前に出ていると、滑舌が悪くなり、言葉がぼやけて聞こえることがあります。こどもの滑舌が気になる場合は、口呼吸や舌の位置が原因である可能性が考えられるので注意が必要です。

前歯が汚れやすい

口呼吸をしているこどもは、常に口を少し開けているため、前歯が外部の空気にさらされやすいです。その結果、前歯が乾燥し、変色しやすくなります。

 

乾燥した歯は、飲食物の色素などが付きやすくなるため、日常の食事や飲み物に含まれる色素が歯の表面に付着しやすいです。特に前歯の先端部分はこの影響を強く受けるので、色が変わりやすい場所といえるでしょう。

猫背

猫背になると、背骨が前に曲がり、それに伴って首や頭が前に突き出るような姿勢になります。この状態では、呼吸をする際の空気の通り道である気道が狭くなり、胸や肺への圧迫が生じることで、呼吸が浅くなる傾向があります。

 

浅い呼吸は十分な酸素を取り込むのが難しくなるため、こどもたちは無意識のうちに酸素を効率的に取り込むための方法である「口呼吸」を選択するようになるのです。

 

このように、猫背や姿勢の悪さは、こどもたちの口呼吸とも関連が深いです。口呼吸の原因を探る際には、姿勢や背骨の状態にも注目することが大切でしょう。

こどもの口呼吸の原因とは?

積み木のクエスチョンマーク

こどもが口呼吸になってしまう原因は、なんでしょうか。なんらかの原因で鼻呼吸が困難な可能性や、歯並びや顎の形など口周りが影響している可能性もあります。詳しく解説します。

扁桃肥大

扁桃肥大とは、のどの奥に位置する口蓋扁桃(一般的には扁桃腺と呼ばれる)というリンパ組織が、普通よりも大きく膨らんでしまった状態です。

 

扁桃腺が肥大すると、鼻からの空気の流れが妨げられてしまい、こどもは自然と口を開けて呼吸をするようになります。さらに、扁桃腺の肥大は舌の位置や動きにも影響を与えることがあり、このような症状が見られる場合には、扁桃腺の摘出手術が検討されることもあります。

 

しかし、扁桃腺の肥大はこどもの成長と共にピークを迎えることが多く、10~12歳頃を境に徐々に大きさが減少することが一般的です。そのため、必ずしもすぐに手術を要するわけではありません。もし、お子様の呼吸や扁桃腺に関して心配があれば、専門の耳鼻咽喉科での診察や相談をおすすめします。

鼻炎

こどもが口で息をすることが多くなる背景には、風邪やアレルギー性鼻炎などが影響していることが多いです。これらの疾患により、鼻の通りが悪くなってしまい、鼻からの呼吸が困難になるため、代わりに口を使って呼吸するようになるのです。

 

特に、アレルギー性鼻炎が長く続くと、口での呼吸が習慣化してしまうことがあります。口呼吸が習慣となってしまう前に、原因となる病気をきちんと診察してもらい、治療を進めることが大切です。

歯並びや顎の形

こどもの口呼吸の背後には、歯並びや顎の成長の問題が隠れていることも多いです。先ほど、口呼吸が歯並びの乱れに影響を与えると触れましたが、実はその逆も存在し、歯並びや口の構造が原因で、こどもが口呼吸するケースもあるのです。

 

特に、出っ歯(上顎前突)のこどもは、唇をしっかりと閉じることが難しく、結果として口を開けて呼吸することが多くなります。さらに、上顎の形成が狭く、舌が正常に位置するスペースが不足している場合も、口を自然と開けてしまう傾向があります。

こどもの口呼吸は改善できる?

女の子の口を診察する女医

歯や口の構造に関わる問題が確認された場合、矯正治療などを検討することで、口呼吸の改善を目指すことが可能です。こどもの口呼吸の改善方法はいくつかあります。専門医に診察してもらって治療する方法もあれば、自宅で改善する方法もあります。

耳鼻咽喉科または小児歯科に相談する

鼻づまりが原因である場合、風邪やアレルギー性鼻炎などを引き起こすことが多いです。耳鼻咽喉科の専門医に受診することで、適切な治療を受けることが可能です。

 

しかし、風邪やアレルギーのような明らかな原因がないにも関わらず口呼吸が続いている場合や、歯並びや噛み合わせに問題が感じられる場合は、小児歯科に相談しましょう。

 

小児歯科における治療には、大きく分けて「形態」を先に治す方法と「機能」を先に治す方法の2つのアプローチが考えられます。たとえば、出っ歯という形態の問題を先に治療し、そのあとで口呼吸の問題を改善するアプローチ、またはその逆の方法が選択できます。

 

どちらの方法を選ぶべきかは、こどもの年齢や口の中の状態によって異なるため、まずは専門家に相談することが大切です。

姿勢や呼吸に注意する

猫背になると、空気が肺へ流れる通路が狭くなり、結果として呼吸が浅くなり、口で呼吸をしやすくなってしまいます。さらに悪いことに、口呼吸を続けることで前かがみの姿勢や顎を前に出すような形になり、悪循環を生むことがあります。

 

日常生活の中でこどもに姿勢を意識させることが大切です。よい姿勢を保つことで、肺への空気の流れがスムーズになり、腹式の深い呼吸がしやすくなります。特に、食事を取る際には、こどもが足をしっかりと床につけ、背筋を伸ばして座れるよう椅子の高さを調整するなどの工夫をするとよいでしょう。

まとめ

笑顔の親子と歯科医

こどもの口呼吸の原因は、病気により鼻呼吸ができない、歯並びや顎の形によって口をしっかりと閉じることが困難であることなどが挙げられます。

 

口呼吸を続けていると、虫歯や歯周病などの口腔内の問題だけでなく、感染症にかかりやすくなるなど、全身の健康を損ねやすくなります。また、出っ歯や受け口などの原因になり、見た目にも影響がでてくるでしょう。

歯並びを改善するには、歯科矯正が必要になるので、口呼吸は早めに改善することが大切です。今回ご紹介した口呼吸をしているこどもの特徴に当てはまる場合は、お子様の呼吸を注意深く観察してください。口呼吸が習慣になっていると気づいたら、耳鼻咽喉科または小児歯科に相談しましょう。

 

お子様の口呼吸の改善を検討されている方は、東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」にお気軽にご相談ください。