フッ素でこどもの虫歯を予防しよう!フッ素の効果と塗布の流れ

2023年07月20日(木)

小児歯科

こんにちは。東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」です。

フッ素をあらわすイメージ図

こどもの虫歯予防には、フッ素塗布が効果的です。フッ素は、歯質を強くし虫歯菌の活動を抑制する効果があります。特に、生えたての永久歯は歯質が弱く、虫歯菌への耐性が弱い状態です。そのため、特にこどもへのフッ素塗布は有効とされています。

今回は、フッ素の効果と塗布の流れについて詳しく解説します。

フッ素塗布の効果

笑顔で自分の歯を指さすこども

フッ素には主に「再石灰化の促進」「歯質の強化」「虫歯菌の活動抑制」の3つの効果があります。以下、それぞれ詳しく解説します。

再石灰化の促進

虫歯は、虫歯菌が生成する酸によって歯が溶かされる「脱灰」によって引き起こされます。

脱灰過程で、歯はカルシウムやリン酸などの重要なミネラル分を失い、エナメル質の結晶構造がもろくなってしまうのです。脱灰が進行し、修復が追いつかなくなると、結果的に虫歯になってしまいます。

しかし、私たちの体には「再石灰化」とよばれる自己修復の仕組みがあります。再石灰化とは、唾液中のミネラル分を利用してエナメル質の結晶を修復し、もろくなった歯を元の健全な状態に戻すことです。初期段階の虫歯であれば、再石灰化の力によって自然に治ることも多いです。

そこで、フッ素の役割が重要といえます。フッ素は、再石灰化を助け、歯の修復を加速する働きをもっており、フッ素が歯に結合すると、エナメル質をより酸に強くし、さらに新たなミネラルの結晶を形成します。これにより、虫歯の進行を遅らせ、場合によっては虫歯を防ぐことが可能となるのです。

歯質の強化

乳歯や生えたばかりの永久歯は、エナメル質(歯の表面を覆う最も硬い組織)がまだ弱く、やわらかい状態にあるため、ダメージを受けやすく虫歯になりやすいです。エナメル質は「ハイドロキシアパタイト」という結晶でできており、再石灰化(エナメル質の再結晶化)を繰り返すことで結晶の間が密となり、歯は徐々に強くなります。

歯をさらに強くするために、フッ素の役割が重要です。フッ素は再石灰化を助け、歯を強くしますが、効果はそれだけではありません。

フッ素を取り込んだハイドロキシアパタイトは、酸に強い「フルオロアパタイト」に変化します。フルオロアパタイトは、虫歯菌が生成する酸による攻撃に対して、より高い耐性をもちます。フッ素を適切に利用することで、抵抗力の強い歯、つまり「虫歯に負けない歯」を作り出すことができるのです。

虫歯菌の活動抑制

虫歯の主な原因は、虫歯菌が生み出す酸です。酸が歯にダメージを与えて虫歯を引き起こします。

そこでフッ素が大活躍します。

フッ素は、虫歯菌の活動を抑制し、酸を生み出すのを阻止することができるのです。具体的には、虫歯菌が糖を分解して、酸を生み出すために必要な酵素(エノラーゼなど)の働きを阻害します。結果的に、口内での酸の生成がおさえられ、虫歯の予防に対して効果を発揮するのです。

また、フッ素は直接歯に働きかけることで、歯質を強化し、初期の虫歯を再石灰化によって修復する役割もあります。これは、フッ素がエナメル質の構造を酸に強い形に変化させることで達成されます。

つまり、フッ素は二つの重要なアプローチで虫歯予防に役立つ優れた成分なのです。ひとつは、歯質強化と初期虫歯の修復による直接的なアプローチ、もうひとつは、口内環境への影響を通じて虫歯菌の活動を抑制する間接的なアプローチです。2つの効果により、フッ素塗布は虫歯予防に欠かせない手段となっています。

歯科医院でのフッ素塗布の方法

こどもと歯科医師が握手している

フッ素塗布は、虫歯予防のために歯科医院で行われる処置です。歯科医院でのフッ素塗布は、高濃度のフッ素ジェルや溶液を歯表面に直接塗布することで、歯を保護し、虫歯の発生を抑制します。以下、歯科医院でのフッ素塗布の方法について解説します。

歯を清掃する

まず、歯科医師や歯科衛生士が歯の清掃を行い、歯垢や歯石を取り除きます。

歯の表面がきれいになっていると、フッ素がより一層歯に結合し最大限の効果を発揮するため、清掃は重要です。

フッ素を塗布する

次に、フッ素ジェルや溶液が歯科医師によってブラシや綿棒を使って歯の表面に塗布されます。

特に、虫歯の発生しやすい奥歯の噛み合わせの面など、細部に至るまでしっかり塗布します。

フッ素を浸透させる

塗布後、5分ほどそのままにし、フッ素が歯にしっかり浸透するのを待ちます。

フッ素がきちんと吸収されたことを確認できたら処置は終了です。

フッ素塗布の頻度

長期または短期をしめすフリップ

フッ素塗布の頻度は、3〜4か月に一度が推奨されています。

歯科医院でのフッ素塗布は、家庭でのフッ素使用とは異なり、高濃度のフッ素が使用されます。

厚生労働省が定める基準では、歯科医院で用いられるフッ素は最大で1,500ppmまでです。家庭用の最大値よりも高い濃度であり、効果は3〜4か月程度持続するといわれています。そのため、年間3〜4回の定期的なフッ素塗布が推奨されています。

フッ素塗布は、通常の歯科検診のタイミングで行われることが多いです。つまり、定期検診時にフッ素塗布を受けることで、フッ素の効果を最大限に引き出し、口内環境を健康に保つことができるでしょう。

フッ素は安全なのか?

クエスチョンマーク

フッ素は、WHO(世界保健機構)によって安全性が認められています。イワシやエビ、牛肉、じゃがいも、海藻類など、日常的に摂取される多くの食品や飲料にも含まれており、私たちは自然にフッ素を取り込んでいます。フッ素はミネラル成分のひとつで、適度な量であれば体に有害ではありません。

しかし、あらゆる食物や薬品と同じく、適正な量を超えてしまうと健康に悪影響をおよぼす可能性があります。たとえば、フッ素を過剰に摂取すると、嘔吐や腹痛を引き起こすことがあります。また、長期間にわたり高濃度のフッ素を摂取し続けた場合、歯に白い斑点ができる斑状歯や骨が過度に硬化する骨硬化症を引き起こすことがあるのです。こうした事例が誤った認識として「フッ素は身体に有害だ」というイメージを生んでしまう一因となっています。

フッ素による急性中毒を起こす可能性は、体重1kgあたり約2mgのフッ素を摂取した場合です。たとえば、体重10kgの1歳児が一度に20mgのフッ素を摂取した場合、中毒症状を示す可能性があります。

しかし、市販のフッ素含有洗口剤のフッ素含有量は、通常1本あたり約1.6mg程度です。つまり、たとえ新品の洗口剤を1本誤飲したとしても、中毒症状に至るまでには大幅に余裕があるのです。

歯科医院でのフッ素塗布も、3~4か月に一度の塗布であるため、過剰摂取による中毒を引き起こすリスクは低いと考えられます。また、ホームケア用のフッ素製品は、一度に低濃度のフッ素しか使用しないため、同じくフッ素中毒の心配はほとんどありませんが、適量を大幅に超えるフッ素の摂取はさけるべきです。特に、こどものフッ素製品の誤飲を防ぐため、手の届かない場所に保管しましょう。

まとめ

笑顔のこどもと歯科医師

フッ素は、虫歯予防に非常に効果的な成分です。虫歯菌の活動を抑制するだけでなく、歯そのものを強くします。また、初期虫歯がある場合、自然治癒を促進させます。特に、永久歯が生えてすぐの頃は歯が未熟で細菌に弱い状態のため、こどものフッ素塗布は有効です。

フッ素塗布は短時間で行うことができ、痛みもないため、比較的手軽に受けられる処置です。フッ素塗布はご自宅でも可能ですが、市販の薬剤は歯科医院のものと比べるとかなり低い濃度となっています。そのため、効果的に虫歯を予防するには、歯科医院でのフッ素塗布がよいでしょう。使用する濃度は厚生労働省の定める基準内であり、高濃度のため効果は3〜4か月持続します。

歯科検診は、3~6か月に一度の頻度が推奨されています。クリーニングや診察と一緒にフッ素塗布も受けるとよいでしょう。特に、こどもや虫歯が多い大人の方は、日々のケアに加えて、フッ素塗布は重要な虫歯予防策となるでしょう。

こどものフッ素塗布を検討されている方は、東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」にお気軽にご相談ください。